154人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっと……
このセーラー服、脱げばいいんですよね?」
「そう。早くしてね」
それは紛れもなく、あの少女と千堂くんの会話だった。
とんでもない台詞を聞いてしまった。
恥ずかしくて、悲しくて、思わず耳を塞ぐ。
千堂くんはいつも、私を好きだと言ってくれていたのに……
抱きしめられたり、前はキスだってしてくれたのに
――それはやっぱり、単なる気紛れだったの?
それとも、私が雪兄との関係を辞めないから?
いつの間にか、ぬるい雫が頬を伝っていた。
自分の涙に気付いた途端、嗚咽が止まらないほど泣いた。
隣りに聞こえないように、そして隣りの音が聞こえないように、ギュッと耳を塞いで。
やっぱり、千堂くんが好きだ。
私は改めてそう実感していた。
なのに、雪兄の気持ちを拒む自信は無い。
雪兄の愛情は、今までの私には欠かせないものだったから。
きっとこれからもそうなのかもしれない。
例えば、もしも結婚なんて出来ないとしても――雪兄の愛情があれば、それで良いと思ってしまえるんだ。
最初のコメントを投稿しよう!