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「絶対に見ないでよね」
「はいはい。僕は紳士ですから」
矛盾だらけの台詞。
“紳士”という言葉が気に入ったらしい。
「紳士とはかけ離れてるくせに」
「何か言った?」
「振り返らなくていいから!」
そんなやり取りをしながらも、とうとう私は
“コスプレ”という世界に、一歩足を踏み入れてしまったんだ。
「着替えた?」
「うーーん」
21歳にもなってセーラー服を着ることになるとは。
なのに、何故か高揚している自分が恐い。
やっぱり私も、危ない人間の素質が有るのかも知れない。
「どれどれ?」
振り返った千堂くんは、目を丸くして沈黙した。
わかってる。
意地悪な千堂くんのことだから、どうせからかうんだ。
「悲しいから、あんまり笑わないで、ね?」
「椿……」
いきなり、千堂くんに抱きしめられてしまった。
変じゃ、ないってことだよね?
「凄く可愛い。似合う。なんかヤラシイ」
スカートの裾に手を伸ばしてきた千堂くんを、思い切り突き飛ばしてやったのは言うまでも無い。
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