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「えぇ。制服はお好きにお使い下さい。
私も助かりますので」
「“助かる”?」
不思議に思った言葉を反芻すると、突然吹いた木枯らしが立花さんの巻髪をフワリと乱す。
それを整える彼女に代わって、千堂くんは私に説明してくれた。
「立花さんはこれから彼氏に会いに行くんだってさ。
少しでも長く一緒に居たいらしいから」
「そう、なんだ」
……とはいえ、“助かる”の意味は解らないままだけれど。
いくつか疑問が残るものの、それなら時間を割かせてはいけない。と、私は立花さんへ頭を下げる。
「時間を取らせてしまって御免なさい。
それなら、早く彼氏さんに会いに行ってあげてね」
「有難うございます。
それではお言葉に甘えて、私はこれで失礼します」
深々と頭を下げた後、立花さんは小さな身体を走らせていった。
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