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私の白い息が、千堂くんの息と混ざって消えていく。
温かい陽差しは、頭上の木々を掠めて寒さを遮ってくれている。
私は日向を見つけて歩きながら、千堂くんに渋々ついていった。
といっても、ここから千堂くん達の高校は目と鼻の先。
アパートを出てから正門をくぐるまで、そう時間は掛からなかった。
「ウチの学校、結構広いでしょ?」
「うん。やっぱり、窓から見てる以上に広く感じる」
記念樹や植木や、とにかく植物の多い高校だと感じた。
校舎は新しくはないものの、少しオシャレな時計が印象的で、古臭さなんて感じない。
自然と、頭の中に数少ない学生時代の思い出が廻る。
……と、千堂くんは不意に私の手を握ってくれた。
彼の表情は少しだけ綻んでいて、なんだか私まで幸せな気持ちになれた。
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