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一人で出掛けることに慣れていない私は、神経質なほど戸締まりをチェックして、玄関のドアにもしっかり鍵をかけた。
よし、出掛けようっ!
意気込んで一歩足を踏み込んだ瞬間、視界の端に人影を捉え、顔を上げた私は思わず硬直してしまう。
「こんばんは」
千堂くんだ。
高校生とは思えないくらいの穏やかな微笑みで、彼は軽く会釈をしてきた。
そっか、ちょうど帰宅の時間だったのか。
いつも窓から眺めていた彼が目前にいるものだから、芸能人にでも出くわしたような衝撃が私の体を強張らせる。
「こ……こんばんは」
私の顔が赤くなっていくのが、自分でもよく分かった。
こうして顔を合わせるのは、彼が引越しの挨拶に来たとき以来だったから。
私はそ知らぬ顔で場を後にしようとした、、、その時だった。
「椿さん……ですよね?
いつもお兄さんとキスしてる」
――刹那、思考が停止した。
「なっ……な……――」
世界に暗幕が引かれたような錯覚を覚えた。
私は思わず。
「な、、なんで知ってるの?!」
――あぁ。
私の馬鹿バカ!
わざわざ自爆するなんて。
恥ずかしさに俯く私に、彼は更に容赦なく凄い事を言ってきた。
「貴方達の事なら何でも知ってますよ。
僕の部屋へ来てみませんか?
そしたら理由が解ると思いますけど」
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