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「さてと。
これから“いいコト”を始めようか」
「あれ?千堂くんの言ってた“いいコト”って、クラスの皆を紹介してくれる事じゃなかったんだ?」
教室を見回しながら訊ねると、千堂くんは、椅子へ座るように促してくる。
「この僕がそんな事で椿を満足させるわけないでしょ?
ほら、座って」
言いながら彼が持ってきたのは、真っ白いキャンバスだった。
使い古されたエプロンのような物も、私の体へ巻きつけられる。
「僕が先生。椿は生徒」
「それってもしかして、私に絵を描けってこと?」
「御名答」
……はっきり言って
私は絵心なんて持ち合わせていない。
絵よりも文字を書く方が好きだったほどだ。
「私、絵なんて描けないよ」
弱音を吐くと、千堂くんは学ランを脱ぎながら優しく言葉を放った。
「手がある限り、絵を描けない人なんていないよ」
「でも、下手だよ?
もはやホラーだよ?」
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