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「散らかってて、すみませんね。
なにせこんな予定じゃなかったから。
まぁ、ジュースでも飲んでって下さいよ」
片付けを終えたらしい彼は、おもむろにテーブルへ案内するけど。
私は遊びに来たのではないわけで。
「長居するつもりじゃないから、気にしないで。
それよりさっきの、なんで私と兄の事……」
そう。
本題はこれだ。
千堂くんが私と雪兄の事をどうして知っているのかを、まずは追求しなきゃいけない。
なのに彼は、冷蔵庫から取り出したジュースを満面の笑みで差し出す。
「そんな事より、これ飲んでよ」
――って、私の質問は無視?
「折角だし、ゆっくりしていってよ。
ね?椿」
そしていきなりの呼び捨て。
千堂くんって、こんなに勝手で強引な人なの?
とはいえ、緊張で喉が渇いていた私は、彼の押し付けに負けてジュースをひと口頂く事にした。
「美味しい?」
「まぁ、おいしいけど」
彼は、ジュースを飲む私の顔を何故かじっと見ている……と言うよりは、むしろこれは観察されている感覚で。
「何か、私の顔にゴミでも付いてる?」
「いや、美味しそうだなぁと思ってさ」
「だから、“おいしい”ってさっき言ったじゃない」
「ふぅーん……」
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