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その日、
有希を保健室に運ぶと、白いベッドに横たえた。
白くて形の良い顔立ち、奪われてしまった唇を、俺が奪い返したい、そう強く思った。
けれど、俺がしたらあいつはもっと傷つくだろ?
理性を飛ばさないように我慢した。
そして同時に後悔もしていた。
有希に好きなやつを聞かれた時に、伝えてしまえば良かった…と。
「ゆ…き…好きだ」
届くことは無いと分かっていた。
有希の白くて長い指に自らの指を絡めさせる。
冷たい有希の手に俺の体温がうつっていく。そして、有希は無意識に俺の手を握り返して来た。
それが無償に嬉しくて、またいっそう強く握った。
で、そのまま眠ってしまった。
で、頬っぺたに痛みを感じて目を開けたら、有希が半笑いで俺の頬っぺたをつねっていた。
手は繋がれたままだった。
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