序章:隠れ厨二だったという話

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裏門から出て二十分ほどたっただろうか。 ちなみに、俺は時間感覚にも自信がある。 何故なら昔カップラーメンの三分を計るのを極めたからね。 木々が等間隔で並べてある、舗装された細い道の真ん中で立ち止まる。 一際強い風が吹き、落ち葉が舞う。 初冬の到来を告げるような、冷たい風。 その場でキョロキョロと辺りを見回した。 「…………ん?」 思わず声が出た。いやいや待って欲しいな。 「む、どうした?」 楓が少し心配そうな様子で尋ねる。 これは、いやまさか……そんなはずは……だが、これは。うん、これは間違いなく。 「多分…………迷った」 淡々と言う。恐らく楓は怒るだろう、と考えながら。 おかしいな、五個中一個の単語を憶えるほどの記憶力を持つ俺なのに。 記憶の通りに歩いて来たんだけど、どこで間違えたのか、そこは全く知らない道だった。歩いているうちに気付けたら良かったけど、生憎考え事をしてたもんですから。 「はあっ!?」 楓が素っ頓狂な声を出す。いつも冷静沈着な楓にしては珍しかった。 「いやいやまあまあ、歩いてりゃ知ってる道に着くかもしれないし、取り敢えず前に進もう」 「光貴くんは何を言ってるんだ? 何のためにわざわざ近道を来たと……」 「だいじょぶだいじょぶ、なんとかなるって」 無理に声を明るくして言った。そうでもしないと俺まで不安になってしまいそうで。 「その根拠の無い自信はどこから来るんだ……はぁ」 楓は溜息をつくと、前に向き直り、ゆっくりと歩き出した。その横に並びトコトコと歩く。 「ごめん、今度なんか奢るから」 困った時の「奢るから」。 「……チョコパだ」 楓は、俯きながら小さく呟く。 「は?」 「チョコパだチョコパ! チョコレートパフェ!」 「あ、ああ。まぁ、それくらいでいいなら」 安いもんだよな。俺の1200円入りの財布の中身が半分ほど減るだけだ。うん、全然悲しくなんかない、よ。 今日金おろそう。
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