序章:隠れ厨二だったという話

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楓の勢いに気圧され、チョコレートパフェを奢ることになってしまった。 こういう風に勢いでおごらされることが俺は結構ある。 気をつけないと、また今月も半月を五百円で過ごす羽目に……おお怖い。 「そういや楓ってチョコレートパフェ好きだよな」 「ふ、ふんっ。別に、他に好きなものがないだけだ。チョコレートパフェは甘いからな」 結局好きなだけじゃないか、と思ったが、口に出すと怒りそうだったのでやめた。こいつの性格くらいとっくの昔に熟知してるんで。 甘いから、という理由だったら別に「好物は黒砂糖です!てへりんこ☆」とかでも良いと思うけれど。 それからしばらく歩いて、気が付いた。 「どこだここ…………?」 そこはいわゆる空き地である。芝生の生えた地面で、周りを木に囲まれている場所だった。 秋も深まり、葉も赤や黄色に色付いているようだ。 「光貴くん、完全に迷ったんじゃないか?」 楓が、さっきより不安の色の強い声音で言う。 まぁ、さっきからずっと迷っている。今更、だ。 「そう……みたいだな。引き返すか」 来た道を引き返そうとして、後ろに向き直る。さっさと引き返そうと、勢いよく足を前に出したところ、 「なっ……。嘘だろ……?」 絶句。 そこには、今まで来た道が無かった。 確かに舗装された細い道を歩いて来たはずなのだが、そこには木が生い茂っていて、道らしき道はなかった。 …………意味不明だ。
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