序章:隠れ厨二だったという話

15/17

879人が本棚に入れています
本棚に追加
/440ページ
慌てて鞄をまさぐり、ケータイを取り出す。キーホルダーがジャラジャラと鳴る。 うるさい。 「そんな……」 圏外と表示された画面を見て、本日二度目の絶句。絶句を一日に二度もさせるなんてどういうことだよくそっ! 『二度あることは三度ある』か?ふざけんな。 「光貴くん、風が……吹いてない」 ゆっくりと、楓が信じたくないと言った様子で、ぼそりと言葉を洩らす。 俺たちが学校を出たときは確かに風は吹いていた。 少し前までずっと吹き続けていて、落ち葉が宙を浮く程だったはず。 それが五分程度風が吹かないのは、絶対にないとは言い切れないけれどやはりおかしい。 何かあるのか? ふと腕にしていた黒い時計に目をやる。 時計は止まっていた。いきなり、だ。急にケータイが圏外になって、突然風がやんで、時計が止まって。 あるか、そんなこと? 「おかしい。どうなってんだ……」 取り敢えずこの空き地のような場所から出ようと考え、空き地の外に足を出そうとする。一刻も早く帰る方法を考えないと。今日は楽しみだった買い物だぞ?くそ! ガツン、と音がした。 手を前に出そうとすると、ある場所から前に進まなくなる。 ペタペタと確認するが、どうやら空き地全てを囲んでいるようだ。 まるでパントマイムだ。 「嘘だろ……。閉じ込められた」 呆然と、呟く。
/440ページ

最初のコメントを投稿しよう!

879人が本棚に入れています
本棚に追加