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ダメだ、少しも状況を理解することが出来ない。
「……って、こんなことしてる場合じゃないんだった」
変な形状の水晶を元々あった場所に直すと、楓を捜すため、この部屋に一つしかない扉へと向かう。
扉は普通に押すタイプの扉で、慎重にゆっくりと扉を開けた。
部屋を出ると、やはりというか、そこには全く見覚えがなかった。
天井には、さっきの部屋と同じような照明的水晶ーーいや、水晶的照明がぶら下がり、板張りの廊下を明るく照らしている。
そこそこ広い廊下には塵一つ落ちていなくて清潔感漂っていた。
ここの家主は掃除好きなんだろうか。
音を立てないように静かに扉を閉じると、慎重に廊下を歩く。
一歩一歩確認しながら歩くと、一つの扉が見つかった。
今度のは横にスライドさせるタイプの扉で、上の方に擦り硝子が嵌めてある。
入ろうかどうか迷ったけど、楓がここにいないという確証はないので、取り敢えず入ってみることにした。行動しないとどうしようもない。さっきの状況よりかは幾らかマシだ。
もし、知らない人がいたらどうしよう。交番でも駆け込もうか。『拉致監禁』なワケですし。
まぁ、そんな余裕は普通にないけど。
いや、これは俺たちが倒れてるのを助けてくれたのか?
そうだとしたら介抱してくれていたのだから、優しい人なのだとは思うけれど、やはり不安だ。
恐る恐る、扉を左にスライドさせる。鬼が出るか蛇が出るか、良いだろう。やってやろうじゃないか。
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