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「……………………。」
一瞬、思考が停止する。気分的には時さえも停止していた。
欧米人的に言うなら「OH……」かな。要するに言うべき言葉が見つからない。
空白の時間が、たっぷり十秒程だろうか。いやもしかしたら一分、ひょっとすると一秒なのかもしれないけれど。
俺はゆっくりと目を閉じて、扉を閉めた。
今、何が起きた?
いや何も起きてない。
混乱する頭を整理する。こんがらがって絡まりあってどこから手を付ければいいのやら。
そこに居たのは、核爆弾級の威力を持っていた『ナニカ』だった。
黒みがかった赤い髪を腰まで伸ばし、タオルで髪の水分を拭き取っていた。OH……。
こだわりがあるのだろうか、その髪は毛先まで艶があり、美しかった。OH……。
そして、その下に意識を持ってきたのが間違いだった。
出るところは出て、締まるところは締まる絶妙なプロポーション。柔らかな曲線にそって、雫が滑る。鎖骨辺りの窪みとへその窪みに水滴が溜まっている。OH!
急に真っ赤になり、とても恥ずかしそうな表情を作っていた顔のパーツは整っており、瞳の色は深紅で、目は軽く吊り気味だった。
だが吊り気味と言っても少しはキツい印象を受けるのだけれど、それよりも寧ろ美少女、という感じ。
肌は透き通るようで、少し上気してほんのりピンクに色付いていたよ。触ったら恐らく滑るようなまでにきめ細かい肌は、かなり柔らかそうだった。OH……。
長い髪から水を滴らせ、赤くなりながらこちらを、一糸纏わぬ姿で見つめる彼女は、信じられない程に扇情的だった。
……と待て待て。
なぜこんなことになった。
耳まで熱くなるのが分かる。今は多分茹でダコ状態だろう。まずいまずいまずいまずい。何が不味い?いやいや寧ろラッキーとか考えた自分死ね!
ごつんと頭を壁にぶつけた。意図的に。
うずくまり、先程見たものを頭の中で整理していると、ガラっと背後で扉の開くような音がした。
鬼が出るか蛇が出るか?
ははっ、出ましたよ。鬼が。
冗談なんて心の中でも言うもんじゃないや。
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