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「本当に何も覚えてないの? あんたバカでしょ。てかどうする気? これから」
どうする気……どうする気と言われても、どうしようもないな。
「あんた学校は行ってたんでしょ?どっかここら辺の学校歩き回ったら?」
俺はぽりぽりと頭を掻くと、思考に耽る。
どうするのが最も得策か。
現状で俺は記憶喪失で、魔法のことすら分からないすっとぼけ野郎である。
学校に通っていたかどうかなんて分かるはずがないし、近所の学校中を歩き回っても俺の通っていた学校なんてのはない。
それだけじゃない。ここに俺は身よりがいない。住む場所もなければ、金もなし。食糧なんて手に入れられるわけが無い。
もしかしたら地球の技術を売ることが出来ればどうにかなるかもしれないけれど、普通の高校生にはモーターすら作れない。八方塞がりだ。
魔法が使えないなら、この世界で稼ぐ方法なんてないだろう。
どうする。
それから十分。出した結論は、
「学校生活を過ごせば、何か思い出せるかもしれん、俺をお前の学校に編入させてくれ」
これしかない。知識がなければ動くに動けないし。
非常に不本意だが、このミオンという娘に頼り、学校に編入。
この娘の家に泊まらせてもらい、バイトで金を貯め、自立。
その後からでも帰る方法を探すのは遅くない。
「いやそれはあんたの勝手だけど……記憶喪失なら家も憶えてないんでしょ?どこに住む気?」
「ここだけど」
「はぁ?何言ってんの?」
顔が怖い。まるで般若だ。もし俺が子供だったら号泣確実だろう。子供じゃないからビクッとするだけだ。
だがここで諦めるわけにはいかない。負けるな及川光貴!
「そこを何とか! お願いします!」
手を合わせて懇願する。無理なお願いなのは分かってる。だけどこの機会は逃せない。
「嫌なもんは……いや、いいかも……」
「えっ? どっち?」
にまっ、とミオンがにやける。何を考えているか分からない笑みだ。
何か企んでるな。男の勘よ。
「いいわ、あんたうちに住みなさい!」
……こうして、光貴こと俺は、晴れてミオンの家の居候になりました。
女の子と同棲ってことでいんだよね?
理性は保とう。
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