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「よしっ!」
目に軽くかかった程度の黒髪。
鋭い目つきで、たまに睨んでいるようにまで思われてしまう目。
目鼻立ちは、まぁ普通だ。
もちろん純日本人なので、瞳は黒真珠のように真っ黒。
「光貴」なんて輝かしい名前を付けてくれた親には悪いけれど、少なくとも明るくは見えない。寧ろ逆かも。
鏡の前で寝癖を確認し、水で整える。
これがまた不思議なもので、本来なら蛇口がある場所には、水晶を丸くくり抜いたような形状のものが備え付けられている。ドーナツ型の水晶だ。
魔力を流すと水が流れる仕組みになっているのだ。
魔力という概念がよく考えたら分からないけど、まぁそのうち分かればいいな。
穴の部分からこれまた何もない空間なのだが、水が発生(?)する。温度は魔力の流し方によって調節可能らしい。びっくりだね。
当然俺は魔力が流せないので、先端に小さな水晶のついた棒を蛇口水晶に当て、水を流す。止める時も同じだ。
この棒水晶は、ミオンから貰った物で、これがないとまだこの世界では生活できない。
ちなみに蛇口水晶も棒水晶も俺が命名した。ナイスネーミングセンスと褒め称えてくれても構わない。
寝癖を直すと、洗面所兼着衣所から出て、右にすぐの自分の部屋に戻る。
まだタンスとベッドしかなく、殺風景な部屋。その年季の入ったタンスから服を取り出し着替える。
服は昨日買ったもので、編入テストを合格するまで制服は貰えない。
全く面倒くさい。
異世界小説だったらだいたい理事長とか権力者の娘と一番最初に合っていつのまにか学園に通えるようになるってのに。
部屋の壁に掛けられている時計を見やると、短針は八を指していた。
たしかテストが九時からだったはずなので、学校に向かうとしたら今からだろう。
取り敢えずミオンを呼んで、出掛けるとするか。道憶えていないので。
自分の部屋を出ると、まっすぐミオンの部屋に向かう。
昨日俺が寝ていた部屋だ。甘い香りのする、女の子らしい部屋だった。
そういえば、何で俺を助けてくれたんだろう。普通は行き倒れだとしても、女の子一人が助けようなどとは思わないはずだ。家に連れて帰るのも一苦労だろう。
それに、まだ俺がどこにいたのかも聞いていない。
行く時にでも聞いてみよう。
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