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ミオンの部屋の前に立つと、コンコン、とノックをする。
流石に同じ間違いを二度する程愚かではない。人間は間違いから学んでいく生物なんだ。
「入っていいか?」
俺が了承を取ると、返事が返ってきた。
「ん……ちょっとまちなさい」
女は準備に時間がかかる、と言うやつだろうか。その準備の時間がドキドキ、とは思わないよ。
「…………いいわよ」
何となく渋った感じの、仕方なくという様子の声。
でもまあ了承は貰ったので扉を開ける。
「ふふん、どうよ?」
そこには、誇らしげに豊満な胸を更に張り、強調しているミオンの姿があった。いやいやそんなに胸張られてもいやらしい目線で見ることしかできないですよ?
ミオンはこれから行く学校の制服を着用。
ブラウスにスカート。胸の部分にはワンポイントで赤いリボンが付いていて、スカートには赤の線が縦に一本入っている。
正直、めちゃくちゃ可愛かった。似合っていすぎ、いやどんな服でもだいたい似合うのかも。得だな。
長い髪は、腰まで垂らしてあって、相変わらず黒めの赤色で艶があり、思わず触ってみたい程だ。というか触ってもいいかな、赤髪なんて漫画でしか見たことないっすわ。
内面はともかくとして、見た目だけならかなりの美少女だ。
「なに? 反応なし? あんた女の子にお世辞の一つも言えないわけ?」
ミオンが不服そうに深紅の瞳でこちらを睨む。炎みたいな綺麗な瞳だなぁ、と素直な感想。
若干上目遣いになり、余計可愛さが増してしまう。
「……その、なんでしょう、アレですね。似合ってると思う」
俺が戸惑いながら言うと、ミオンの顔が急に耳まで赤くなる。夕日の様に真っ赤だ。
「そ、そんなの知ってるわよバッカじゃないの? ほら、早く行くわよ」
そう言うと、ミオンは黒い学校用の鞄を持ってさっさと部屋から出た。ちくしょう恥ずかしがり屋さんめ。
さすがに鈍感な人たちとは違ってあれが照れであることくらいは分かる。
自分の顔を見られたくないとでも言うように、ずっと俯きながら出て行った。
「……恥ずかしいのはこっちだっつの……」
誰もいなくなった部屋でそう呟くと、部屋の女子っぽい香りを吸い込みながら、ゆっくりとミオンの後を追った。
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