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ミオンが住んでいる、二人で住むには些か大きく感じる家を出て学校まで徒歩で向かう。
空飛ぶ絨毯や箒は使わないらしい。
編入テストに受かれば、ほぼ毎日歩くことになる道だ。
住宅地の細い道を抜けて、広い道を歩く。
次第に建物が増えてきていた。
そして街道。
街の中は、魔法で溢れていた。
大きな輪のような水晶からは水が噴き出ていて、噴水の役目を果たしている。
走り回る子供たちのおもちゃも、変なところから水が出たり、風が吹いたり、奇想天外。
焼き肉の店の看板は、文字の部分がずっと燃え続けている。
水晶屋や武器屋みたいな物もあって、まるでゲームの中の世界のようだ。いや水晶屋なんて見たことないけれど。
ふと、気付く。
なぜこの国は言語が日本語なのだろう。
異世界なのだから言葉なんて通じないのが普通でしょ。
ところがここでは通じてしまう。それは何故?
……分からん。
地形が地球と同じというのも変だし、日本語が通じるのも変だ。
いや、そもそも俺がこんな世界にいる時点でおかしいのだ。ホント、なんでこんなことが起きたんだろう。
しばらく考えてみたが、答えは見つかりそうになかったので頭の中を切り替える。
「そういえばさ、ミオンはどうして俺を助けてくれたんだ?」
ミオンが怪訝な顔をして、こちらを振り向く。
「どうしたの急に」
「いや特に意味は無いんだけど、助けないだろ、普通。それに重いだろうし」
フンッと鼻で笑われた。
「別にー。そんなの普通でしょ。それに魔法で運んだからあんたみたいなの重くなんてないし」
どうやら、本当にそう思っているらしい。
人を助けるのが当たり前、か。
口は悪いが、優しい奴なのかもね。
しかし、魔法というものは本当にすごい。
何でもは出来ないが、殆どのことを『魔力』なんてよく分からないエネルギーで済ませてしまう。
魔力は誰にでもあるらしい。俺にもあるのか?
やはり分からないことだらけだった。
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