問題が一つ増えましたと言う話

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「じゃ、行ってくる」 くるっと反転して職員室に向かう。 今から行く職員室は、第三職員室らしい。職員室の扉の上に書いてある。 敵地に乗り込むスパイの気分だよ全く。いざ、出陣! 「あ、ちょっと待って」 歩き出した直後、ミオンから呼び止められた。出ばなを挫かれてしまったみたいだ。 ミオンがこっちに駆け寄ってくる。 そして、耳に口を寄せると、ごにょごにょと囁いた。おいおい変な気分になってしまうよ。もし俺が変態だったら流れでキスしたかもしれないってのに。無用心だ。 「もしーーーーならーーーーよ、分かった?」 「ああ、できたらな」 「よし!じゃ、行ってきなさい」 耳から顔を離すと、トン、と背中を押された。 「おう」 そう言って、今度こそ職員室に入り、昨日会った先生(会ったのは学校ではなく、市役所のような場所だ)を探す。 結構な人数がいたが、幸い扉の近くだったのですぐに見つかった。 「先生、編入テストを受けに来ました」 白髪、と言っても真っ白ではなく、灰色のような髪で無精ヒゲ。 中肉中背で軽く猫背、そして目は常に半開きなので、やる気のなさそうな印象を受けるその男に、声を掛けた。 やっぱり、予想当たってそうだな。 「ああ、やっと来たか。これで試験が始められるな」 やたらトーンの低い声で言うと、咥えていた煙草を灰皿に捨て、膝に手を置き立ち上がる。 「よっこらせ、と」 老人のような掛け声をかけるが、この男、まだ二十八歳。 二十八年の間に何があったのだろうか……この歳にして、既に定年のサラリーマンのような雰囲気が醸し出されてる。 「あー、闘技場まで遠いし……てかぶっちゃけたりぃなぁ。はぁ……」 なんとも見た目通りの男だった。性格は顔に表れるのかな。と言っても俺の性格は怖くないのであしからず。 「じゃ、行くぞ及川。ついて来い」 そう言って怠そうに髪をボリボリ掻きながら職員室から出て行った。 俺は慌てて追いかけた。おいおい、協調性って大事だよ。
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