879人が本棚に入れています
本棚に追加
/440ページ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現在時刻八時零分。
鳥がチュンチュンと囀(さえず)っている。
俺は二年B組の教室にいた。
もちろん自分の教室だ。
クラスからも分かる通り、俺は高校二年生、誕生日は既に迎えたので歳は十七だ。
高二にもなると学校にも慣れ、人間関係もマンネリ化し、そろそろ変化が欲しい頃。
別に『不幸だー』なんて言うつもりはない。別に不幸じゃないから。
むしろ一般的に言って幸せの部類の人間だろう、俺は。
友達にも家族にも不満はない。強いて言うなら、彼女が欲しい、かな。
まぁ高校生ならだいたい彼女の一人や二人欲しがるに決まってる。特に不思議なことじゃないさ。みんな言ってるよ。
ただ、マンネリ化してしまった日常に、このときの俺が退屈を感じてしまっていたのは事実だ。
変化なんて簡単に起こりはしない。起こしたいなら行動すべき。
生憎俺にはそこまでの行動力はないけどね。
古びた校舎の二階、階段を上がってすぐにあるこの教室は、すでに多くの生徒で賑わっていた。
「む、またボンヤリしてるな、光貴くんは」
少し低めの、クールな感じの女性の声。
自分の机で頬杖をつき何処ともなく眺めていると、一人の少女が話し掛けてきた。
「別に。なんでもない。楓こそどうしたんだ?」
肩まで伸びた栗色の髪がよく似合う、若干クールなこの少女の名は西條楓(さいじょうかえで)。
楓は口を小さく開けて息を吐く。
呆れてるのだろう。
やれやれと言った様子で頭を掻くと、若干照れ臭そうにしながら言った。
「…………今日は買い物に付き合う約束だろう、忘れたとは言わせない」
「あー、そういやそうだったな」
そういえば、そうだった。
たしか先週の木曜日、つまり10月17日、楓と二人で帰宅している最中にそんなことを話した気がする。
最初のコメントを投稿しよう!