序章:隠れ厨二だったという話

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 現在時刻八時零分。 鳥がチュンチュンと囀(さえず)っている。 俺は二年B組の教室にいた。 もちろん自分の教室だ。 クラスからも分かる通り、俺は高校二年生、誕生日は既に迎えたので歳は十七だ。 高二にもなると学校にも慣れ、人間関係もマンネリ化し、そろそろ変化が欲しい頃。 別に『不幸だー』なんて言うつもりはない。別に不幸じゃないから。 むしろ一般的に言って幸せの部類の人間だろう、俺は。 友達にも家族にも不満はない。強いて言うなら、彼女が欲しい、かな。 まぁ高校生ならだいたい彼女の一人や二人欲しがるに決まってる。特に不思議なことじゃないさ。みんな言ってるよ。 ただ、マンネリ化してしまった日常に、このときの俺が退屈を感じてしまっていたのは事実だ。 変化なんて簡単に起こりはしない。起こしたいなら行動すべき。 生憎俺にはそこまでの行動力はないけどね。 古びた校舎の二階、階段を上がってすぐにあるこの教室は、すでに多くの生徒で賑わっていた。 「む、またボンヤリしてるな、光貴くんは」 少し低めの、クールな感じの女性の声。 自分の机で頬杖をつき何処ともなく眺めていると、一人の少女が話し掛けてきた。 「別に。なんでもない。楓こそどうしたんだ?」 肩まで伸びた栗色の髪がよく似合う、若干クールなこの少女の名は西條楓(さいじょうかえで)。 楓は口を小さく開けて息を吐く。 呆れてるのだろう。 やれやれと言った様子で頭を掻くと、若干照れ臭そうにしながら言った。 「…………今日は買い物に付き合う約束だろう、忘れたとは言わせない」 「あー、そういやそうだったな」 そういえば、そうだった。 たしか先週の木曜日、つまり10月17日、楓と二人で帰宅している最中にそんなことを話した気がする。
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