序章:隠れ厨二だったという話

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三時限目の古文の授業中、俺は年老いた先生の、眠りを誘う魔のボイスを聞きながら、考えごとをしていた。 何かが足りない。そう思っていた。厨二っぽいな、とは自分でも思う。 何が足りないんだ? 金?そうだけどそうじゃない。 才能?いや確かにないけど!ってうるさいわ。 顔?いやこれはマジでかっこ良くしてくださいよ神様仏様。 まさか、女の子?うん、それかも。 なぜ急にそんなことを考えたのかは自分でも分からないが、どこか喪失したような感覚がしていた。 体の何かが足らないような。例えば人差し指がなくてもどかしい気持ち……だろうか? まぁ全然違うけれど。 ここ最近ずっとだ。 何度も言うけど、別に今の暮らしに満足していないわけじゃない。むしろ幸福な部類。 けどそれでも、友達と喋っていても、勉強をしていても、ポテチを食べながらテレビを見ていても、学校に登校する時も、クラスのみんなで盛り上がっていても、何か足りない、そんな気がしていた。 何が足りないのかなんて説明することは出来ない。というか俺にも分からない。 だがたしかに何かが、決定的な何かが欠けている。
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