879人が本棚に入れています
本棚に追加
/440ページ
三時限目の古文の授業中、俺は年老いた先生の、眠りを誘う魔のボイスを聞きながら、考えごとをしていた。
何かが足りない。そう思っていた。厨二っぽいな、とは自分でも思う。
何が足りないんだ?
金?そうだけどそうじゃない。
才能?いや確かにないけど!ってうるさいわ。
顔?いやこれはマジでかっこ良くしてくださいよ神様仏様。
まさか、女の子?うん、それかも。
なぜ急にそんなことを考えたのかは自分でも分からないが、どこか喪失したような感覚がしていた。
体の何かが足らないような。例えば人差し指がなくてもどかしい気持ち……だろうか?
まぁ全然違うけれど。
ここ最近ずっとだ。
何度も言うけど、別に今の暮らしに満足していないわけじゃない。むしろ幸福な部類。
けどそれでも、友達と喋っていても、勉強をしていても、ポテチを食べながらテレビを見ていても、学校に登校する時も、クラスのみんなで盛り上がっていても、何か足りない、そんな気がしていた。
何が足りないのかなんて説明することは出来ない。というか俺にも分からない。
だがたしかに何かが、決定的な何かが欠けている。
最初のコメントを投稿しよう!