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ファミリーレストランからの帰り道――
自転車に乗る俺は、いつも以上に重たく感じるペダルを回しながら、”黒子”について思案していた。
――何すればいいんだろう……
当日欠勤してしまえば楽なのだろうが、次の仕事を紹介してくれなくなる。
19歳高卒、中肉中背――
加えて、彼女居ない歴=年齢。
このスペックで仕事など見つかる筈も無い。
……最後のは関係ないか。
尽く面接や試験を失敗して来た俺。
後悔の念が尽きない。
――あの時、緊張さえしなければ……
俺は極度のあがり症で、面接や人の多い場所だと頭が真っ白になってしま――
「――待てよ?」
もしかして、”黒子”という立場は、俺にうってつけなのではないか?
考えてみれば、”黒子”とは陰の存在だ。
表だって目立つ事は無いはず。
とすれば――
「――実はおいしい仕事だったりして……」
先程まで重たかったペダルが、嘘の様に軽くなる。
軽快に回転数を上げ、自宅へ向け国道沿いを走った。
街路樹として植えられた銀杏が、色を変えて秋を伝える。
銀杏吹雪とでも呼ぶべきか、舞い落ちる様がやけに美しく思えた。
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