黒子……誕生!

2/13
前へ
/81ページ
次へ
 ファミリーレストランからの帰り道―― 自転車に乗る俺は、いつも以上に重たく感じるペダルを回しながら、”黒子”について思案していた。 ――何すればいいんだろう……  当日欠勤してしまえば楽なのだろうが、次の仕事を紹介してくれなくなる。 19歳高卒、中肉中背―― 加えて、彼女居ない歴=年齢。 このスペックで仕事など見つかる筈も無い。 ……最後のは関係ないか。  尽く面接や試験を失敗して来た俺。 後悔の念が尽きない。 ――あの時、緊張さえしなければ……  俺は極度のあがり症で、面接や人の多い場所だと頭が真っ白になってしま―― 「――待てよ?」  もしかして、”黒子”という立場は、俺にうってつけなのではないか? 考えてみれば、”黒子”とは陰の存在だ。 表だって目立つ事は無いはず。  とすれば―― 「――実はおいしい仕事だったりして……」  先程まで重たかったペダルが、嘘の様に軽くなる。 軽快に回転数を上げ、自宅へ向け国道沿いを走った。  街路樹として植えられた銀杏が、色を変えて秋を伝える。 銀杏吹雪とでも呼ぶべきか、舞い落ちる様がやけに美しく思えた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

331人が本棚に入れています
本棚に追加