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世間で噂される程に若く見える母さんは、ずれた部分も相まって――
不思議と近所の方々に人気がある。
――DNAって残酷だよな……
「あ、糞兄貴。帰ってたの」
玄関の戸を開け、帰宅した妹――”瑛里華(えりか)”。
いつの間にか俺を見下す様になった瑛里華だが、これはきっとツンデレであると信じている。
「ああ。帰ってきて悪いか?」
「ううん。世間の目に触れなければ大丈夫」
そう言った瑛里華は、日陰に似た黒い笑みを浮かべた。
心の黒さを除けば、日本でもトップクラスの美少女だろう。
DNAの残酷さにより、母さんの容姿と父さんの頭脳を受け継いだ瑛里華。
俺とは月とスッポン程に差があるスペックを持っている。
ちなみに、生前父さんは大学教授をしていたそうだ。
――考える程に侘しいな……
ため息を吐き、自室へと向かう俺。
その背に向け、瑛里華は上から目線で一言――
「まあ、精々頑張りなよ」
そうエールを送ってくれた。
泣いてもいいのだろうか?
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