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石造りの壁が周囲を取り囲んでいた。
部屋の中央に置かれた古いテーブルの上には、細かな装飾を施した燭台が置かれており、揺れ動く蝋燭の炎が、壁面にいびつな人影を映し出していた。
テーブルの上には、他に大小様々な器が並べられている。
器の中には、細かな粉末、粗く砕かれた木の実のようなもの、刻まれた植物の根、黒くねっとりとした油、これも様々なものが入れられていた。
影の主は、木製のへらを使い、大きな器から、やや黄味がかった白い粉末をすくい取ると、傍らの浅い皿に移した。
「ウブドゥ・エビ・アヤタ」
口から流れ出したのは、古き民の失われた言葉。
影の主は、満足気にうなずくと、白く細い指先で茶褐色の粉末をつまみ取り、皿の上に広がる白い粉末の上に振り掛けた。
「ザジャ・ネプト・クガ」その間も口からは、古語が流れ続けている。
主は陶製の壺を取り上げ、白濁した液体を器に注ぎ込んだ。
液体は、粉末の上を流れ、放射状に紋様を描いた。
仕上げに、黒い油をひとしずく。
「オリゴ・ング・バギ」言葉を唱える。
――全ては、我が意のままに。
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