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ツクツクボーシ
半月目玉につつじの木が映った。
その低い緑の向こうに立っているのは、いま玉虫が着ているのと同じ制服。
(‥‥‥)
ツクツクボーシ
チェック柄のズボンの前にはツインテールの女の子。
「ふうん」
七尾玉虫は、ぐるんと空を見て芝生の上に寝転んだ。他人の好きだ嫌いだのの話を覗くほど、コイツは趣味が悪くはない。
「なぁ御堂よ、ここまで言い寄ったからには、俺も退けないわけよ。どうしても付き合えないってんなら、ネット上で、あんな噂、こんな噂流しちゃおうかなぁ~」
ツクツクボーシ
「あ~もうイヤ。私帰る!」
「待てよ!」
「触らないで、帰る! ケロ」
「待てったら」
〈ケロ〉
「ケロ?」
(ケロ?)
玉虫は首を左に向けた。
帰ろうとする御堂架輪の手首を、チャラ男君が握っているのはつつじの緑の向こう。
手首を掴まれた女の子の頭の上には、一匹の雨蛙。
(まさかな)
七尾玉虫は立ち上がり、ジーンズに付いた芝を素早く払った。
茶褐色のサラサラとした髪の毛。
身長は高くはない。
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