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「ケロさん、ちょっと、私まで閉じ込めないで!く、苦しいじゃない!」
「ケロ?」
玉虫はベンチを飛び越えた勢いを、シャボン玉の浮かんでいる砂場に両足をくるぶしまで突っ込む事で止めた。
「おいカエル、ふざけ過ぎだ!」
カエルの目の前に、吊り上がった半月目玉が二つ。
玉虫は右手の中指を親指に引っ掛けて、口をへの字に曲げた。
ペシッ
玉虫の中指に強烈に弾き飛ばされたケロさんは、クルクルと宙を舞って、落ちて行く先、地面のすれすれでボンと鳴って、小さい小さい雲になった。
「た、玉虫クン、助けて‥‥」
御堂架輪がかなり小さくなったシャボン玉のなかで、息苦しそうに七尾の名を呼んだ。
「まったく‥‥」
七尾玉虫は右の耳に指を入れ、そこから銀色の鍵を取り出すと、今度はそれを、左の耳にすうっと入れた。
鍵が差し込まれた左の耳からは煙がもくもく。
その、もくもくの中から、綺麗なつま先が現れ、次に白い太ももが現れ、煙が公園に吹き付ける風に流されきると、長い黒髪の狩衣姿の美しい女が砂場にひょろりと立っている。
〈あ~ぁ、良く眠れたわぁ〉
口をへの字に曲げた玉虫と古風な美女。
蛙の風船はふわりふわり。
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