御堂の雨蛙

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  「待ちわびの式部サン、シャボン玉の中の女の子を助けて!」 〈あらぁ、あの女の子、玉虫殿の彼女かしらぁ?〉 待ちわびの式部は狩衣の袖をまくり、白い腕を公園の空気にさらすと、ぬぷっと細い指先から、白く長いそれをシャボン玉の中に入れた。 〈そぉうれ〉 ピチャ 「痛ったー」 式部サンにシャボン玉の中から引き抜かれた御堂架輪は、砂場の縁の木材に、勢い良くお尻を打ちつけた。 玉虫は口をへの字に曲げたまま、左手に持った手鏡を、チャラ男を飲み込んだままのシャボン玉に向け、右手の親指で鼻の頭をサッと擦った。 鏡を向けられたシャボン玉は、七色に光るその円形を、ゆっくり、ゆっくりと薄くして行く。 「おい、御堂」 「えっ?」 「あれだ、<陰の気>なんてもんは、しっかりと感情の裏側にしまっとくもんだ」 蛙の作ったシャボン玉は、すっかり玉虫の手鏡に写し取られた。  
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