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「オムライスが食べたい。」
肌寒いけれどよく晴れた日のお昼時に、招き猫様が仰いました。
昼食用の煮干しとちくわ(招き猫様の好物)を皿に用意していた、僕の手が止まります。
「オムライスですか?」
聞き返しましたが。鮮やかなオレンジと黒のブチが白地に浮かぶ背中を、招き猫様はきゅっと丸めるばかり。
骨董品寸前のテレビジョンより流れるお笑い番組に、集中を戻されたようです。
招き猫様はわいわい賑やかな雰囲気と、ブラウン管の画面に発生する静電気がお好きなのです。ヒゲや肉球がぱちっとする感触が楽しいらしいです。
急にオムライスとは、また始まった。招き猫様のワガママが。
しかし僕は招き猫様の秘書として、いかなるワガママをも、受け入れねばならぬ立場にありました。
建物の中でじっとしてくれているのなら、僕は楽ちん。みんなも幸せ。
招き猫様は、脱走が密かにお好き。そうしたら大騒ぎをして、帝国中を探すハメになるのです。
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