回天

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今はともかく、オムライス。 南蛮渡来の品は、古代より続く招き猫様の文化を駆逐するものとして、お偉い方の嫌悪の対象でありますが。スポーツと食べ物は別であります。 わいわい騒がしいのと美味しい食べ物は、全ての招き猫様が何よりお好きです。 会社から徒歩三分の洋食屋に、僕はオムライスの出前を頼みました。 「招き猫様、オムライスが届きましたよ。ちゃんと玉ねぎは抜きですよう。」 薄い山吹色で真っ赤な鶏肉ご飯をくるんと包んだ、ほかほかオムライス。 自分で絵を描けというサービスなのでしょうか。ケチャップも丸ごと一本お盆に載っています。 「ここは定番として、卵の上にハートでも描いときます?」 ウキウキとケチャップをひねり出す僕に、のっそり卓上に上がってきた招き猫様が冷ややかな瞳。 な、何だろう。
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