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冷たい、冬の日だった。
私は兄さんや姉さん達とはぐれて、独りさまよっていた。
ちらちらと、雪が舞いはじめたこの寒さの中、みんなで暖をとれないということは、すなわち死を意味していた。
だんだんと強くなっていく雪の中、気付けばいつもみんなで戯れた大木の足元にいた。
私にとって、ソコは幸せの象徴だった。
最期くらい、幸せな思い出の中で逝きたかったのだ。
もうとっくに身体は限界を迎えていて、私はその場に倒れ込んだ。
積もりかけのさらさらした雪の上、確実に冷たいはずだったけれど、不思議と寒さは感じなかった。
もう感覚はなかった。
疲れきった身体は重くて、ゆっくりと瞳を閉じた。
ああ…私死ぬのね…
暖かい思い出に包まれて、なんだか本当に暖かいような気すらした。
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