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ぱちぱちと、マキのはぜる音がする。
重たい瞼を少し開くと、暖炉に明々と火が灯っているのが見えた。
生き…て、る…?
起き上がろうとして、だけど頭がくらくらしてふらついた。
「ああ…目が覚めたのか。無理すんな。雪に埋もれて凍死寸前だったんだ」
声に、振り返った。
ヒト…男だった。
私はしげしげと、上から下まで男を観察する。
年の頃は20半ば程。
黒い艶やかな短髪に、左耳に銀のピアス。
少し痩せた長身に、麻のシャツと細身のパンツを纏っていて、浅黒い肌に程よくついた筋肉が映えている。
ぶっきらぼうな物言いは、一見とても冷たく響く。
けれど切れ長の瞳の奥に、確かに優しさが灯っている。
「ほら…食えっか?」
目の前に、温かそうなスープが差し出される。
そっと口に含むと、じんわりと身体の奥に溶け込んでいく感じがした。
少ししか食べられなかったけれど、なんだかとても安心して、私はまた眠りに引きずり込まれていった。
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