米山の戦い 前編

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放った斥候が戻ると景虎へと報告がなされた。 それに寄れば、魚沼衆は魚沼川を渡り、信濃川へ迫っているとの事。 景虎は更に進軍速度を上げると、信濃川の畔へと陣を敷き魚沼衆が来るのを待っていた。 しばらく待つと、馬の嘶く声と共に、何も知らぬ上田景国率いる魚沼衆三千が現れた。 晴景と栃尾城を挟み撃ちにする算段から、晴景が柏崎の地へ来たと報告を受けてからの出陣であった。 「信濃川を渡り切るまで待ち、その後に矢をいかけよ!!」 景虎の指示が出されると、皆が固唾を飲んで魚沼衆の同行を見守った。 そんな折、宇佐美定行は悠馬へと声を掛けた。 「この戦、後腐れを残しては後々の厄介事を招く怖れがある......悠馬よ。上田景国を生け捕って参れ!!」 「なっ!!!!」 これに悠馬、言葉にもならない声を上げると、宇佐美定行の顔を覗き込む。その顔は笑ってはいたが、目を見れば真剣そのものであった。 悠馬は初陣にも関わらず、大将を生け捕れと言われ戸惑いを隠せなかった。 「怖れながら、某は初陣にございます。それを大将を生け捕れとは、少々酷と言うもの.....」 これには宇佐美、笑いながりに答えた。 「ただ戦場を駆け巡るのであれば命等いくつあっても足りぬもの。目標を見据えてこそ、生き残り結果もついて来ると言うものよ」
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