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だが母さんは気付いていないのか又は耐えられる程なのか、平然としてハサミを切る事に集中している。
「母さん!棘刺さってるよ!もう止めなよ、病院行かなきゃ!」
そう言うけど母さんは止めない。
毒は多分、蠍の色からして強いはずだ。
そして遂に、母さんは最後の尾の棘をジャキっと切った。
「ふう…」と息を吐き、額の汗を拭う母さん。
そしてそのまま居間のテーブルの前に座り、左肘をついて顎を乗せ、テレビを見始めた。
え?ちょっと、何してんの?
刺さったんだよ?
病院に行かなきゃ。
死んじゃうよ。
あれで平気な訳が無い。
「母さん、病院…」
そう言うが、無視したのか或いは疲れたのか、俺の言葉に反応を示さなかった。
何で無反応?
そこで視界がぐるっと渦巻き、再び視界が安定した時目の前に広がるのは、見慣れた自分の部屋の天井。
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