困った困った

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「クレイー、そっちは見つかった?」 「いや……」 暖かな木漏れ日が、ぽつぽつと斑点のように黒い生地に射していた。 春が訪れ、子供達は町中で元気に遊び回っているだろう。それなのに、ふたつの黒い人影は、そこだけ真冬にでもタイムスリップしているのか漆黒のコートを着ていた。膝まで丈が伸びていて、両者ともきっちり着こなす姿は堅い印象をもたらす。 ……が、冒頭の前者の声は、至極軽いものであった。 「あーもう、なんでこんな森にわざわざガキを探しに来なきゃいけないの?」 「仕方ないだろう。依頼だ」 前者の人影が地面を乱雑に蹴り飛ばしながら、不満そうに口を尖らせる。それに対し、クレイと呼ばれた人影は淡々と辺りを見渡しながら歩いていく。 ふと、クレイの足が止まった。つられて軽い口調の人影も、止まった。 「ルカ……待て」 「はいはい?」 頭の後ろで手を組みながら、ルカと呼ばれた軽い口調の人影はダンスじみた動きで振り返る。 クレイはその場で静かに目を閉じた。すると、木々達がざわめく音に混じり、自身の遠く後方から地獄を思わせるうなり声が上がった。
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