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「あ……や……」
空より青い顔になる少年に対し、ウルフは余裕と言わんばかりに舌舐めずりをした。
どくん。心臓の音が聞こえる。……一体誰の?
どくん。心臓が喉元に競り上がってくるのを感じて、少年は必死に飲み込んだ。
どくん。……あたまがからっぽだ。
「た、たすけてったすけてええええ!!」
がらがらになっている声に構わず、残りの力を振り絞り少年は声を張り上げた。目尻には涙を浮かべ、口を閉じると恐怖から歯がカチカチと音を立てる。
次に聞こえたのは、少年の体が噛みちぎられる音……
「ギャンッ!!」
ではなく、ウルフの悲鳴と、何かが草むらに落ちたような音だった。
「間に合ったか……」
心地の良い低音声が、少年の鼓膜を刺激する。おそるおそる薄目を開けてみると、少年の視界いっぱいに黒と赤が広がった。
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