困った困った

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幾多もの戦いを勝ち抜いてきた戦士のような、堂々とした佇まい。腰には漆塗りの鞘を携え、右手にはショートカットの髪と同じ紅の刀身をした日本刀が握られている。シックな黒いコートは、青年のミステリアスな印象を更に強く植え付けた。 少年は、自分が関わってきた人々を全て思い返してみても、これほどまでに一人の人間を頼もしく思ったことはなかった。 「あ……あの……」 「目を閉じて、耳も塞いでいろ。すぐに終わる」 冷たい響きだったが、その内容は少年に残酷な行為を見せないよう考慮する暖かなものだった。赤髪の青年が背中を向けているにも関わらず、少年は何回も首を上下に動かす。目を閉じる直前、少年の目にぴくぴくと痙攣して倒れ伏したウルフが見えた。少年の心に安心感が多量に注がれた瞬間だった。 少年が次に感じたのは、頭に乗せられた優しい手のひらの感触だった。
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