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僕は気まずさを誤魔化すように頬をかくと、それに答えた。
「あっ、えっと、これからリオールまで行くんだけど」
年端のいかない少年にどう接していいかわからない。
少年はそんな心情などお構い無く続けた。
「ふ~ん。ねぇ隣座ってもいい?」
僕はその時初めて、自分の隣がカバンでうまっていた事に気付いた。
僕は慌ててカバンを膝に置くと「どうぞ」とうながした。
少年は僕の隣にちょこんと座ると、肩に乗ったリス型ロボットの頭を撫でていた。
金属質な帽子のせいで表情は見えない。
僕は何気にその帽子に手を伸ばした。
「この帽子変わっているね」
「触らないで」
うつむいたままの少年。
その手が止まっていた。
気まずい雰囲気。
車両の空気を裂く重い音だけが響いていた。
気まずさを残したまま過ぎていく時間。
その沈黙を最初に破ったのは意外にもリス型ペットだった。
突然少年の手元から抜け出す。
慌てて捕まえようとする少年の手をかいくぐり、リスは僕の膝に飛び乗っていた。
「あ!」
あげかけた声を遮るように少年は僕の膝にダイブしていた。
リスは僕の体を駆け回り、それに合わせ体をまさぐる少年。
僕は少年をひき止めようと手を伸ばすが、狙いは外れ少年のメットのような帽子に当たる。
冷たい金属の感触と共に、少年の頭を覆う何かは外れ床に転がった。
同時にそこから長い銀髪が溢れ出し、宙を舞って泳いでいた。
帽子は床を滑るように自転して、向かいに座るおばさんの足元で止まていた。
幼い顔を覆う銀髪。
その合間から微かに見えるふせた瞳。
その輪郭は女性の丸みをおびていた。
少年だと思っていた幼児は少女だった。
この子はもともと少女だったのだ。
きっと睨んだ幼女の目線をたどると、膝に乗せたカバンの中からリスが頭を出していた。
少女は構わずカバンに手を突っ込み被疑者確保にいそしみ出す。
どうもこの幼女にプライバシーの壁は無いらしい。
たが忌避感はなく、むしろ・・・
共感・シンパシー
そう僕はこの少女にシンパを感じていた。
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