閉鎖都市

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向かい席では帽子を拾い上げたおばさんが、そんな僕達を微笑ましそうに見ていた。 兄妹に見えているのかも知れない。 その名も知らない妹はと言うと、その間も僕のプライバシーを漁り続けているのだが。 名も知らない妹。 そう言えばまだこの少女の名前すら知らない。 「ねぇ」 カバンに半端まで頭を突っ込んだ少女が振り向く。 「ふみゅ?」 その手にはリスが握られていた。 「あの、えとその名前」 「ふみゅ?みゅ?」 少女は思案するように眉にシワを寄せると答えた。 「スピット」 スピット?聞き慣れない名前だ。 もしかしたら都市外の住民なのかも知れない。 そんな事があり得るのかはわからないが。
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