閉鎖都市

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僕の育った街は一種の閉鎖状態にあり、市街区に出る事は許されない。 いつからなのか、僕が産まれた時にはすでに都市は閉鎖されていた。 高い壁で外の世界と隔離され、出入りは厳重に管理されている。 噂では外の世界と行き来出来る者がいると言うが、真相はわからないしアッパーミドルの僕には縁がない。 そう思っていた。 この少女と会うまでは。 外部からの出入りはもしかしたら割りと簡単なのだろうか。 僕は外の世界を全く知らないのだ。 この少女がそうなのかはわからない。 わからないがいつの間にか、彼女に外の世界を照らして見ていた。 「そうかスピットて言うんだ。 僕の名前はフェル・ノゼッタ」 少女は不思議そうに首を傾げる。 「よろしくスピット」 手を差し出す。 少女はリスの手を取るとその手で握手した。 「スピットがよろしくねって」 「えっ?」 少女は不思議そうに僕を見上げた。 「私はノワールだよ」 「ノワール?」 そう聞き返す。 「ノワール」 そう言って微笑んでいた。 「そうだよねっスピット」 そう言ってリスの頭を撫でる少女。 どうやら少女の名はノワールのようだ。 「ノワールはどこから来たの?」 「向こう」 そう言って進行方向を指す。 「リオールから?」 その先は都市外になる。 「名前はわかんない」 質問を変えて見る事にした。 「列車にはよく乗るの?」 「列車って?」 まさか列車を知らずに乗ってるなんて事があるのか? 「ふ~んそうなんだ。 この乗り物列車って言うんだ」 見ると少女はリス相手に話をしていた。 「初めてだよ」 今度は僕に言ったらしい。 「聞いてもいい。どうして列車がわかったの?」 「スピットが教えてくれたの」 そう言ってスピットの頭を撫でる。
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