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静かにじっと見ていると、その人は『透明な何か』を床にこぼしている。
それが涙だと気がついた時、私は不思議なことに怖がっていたことを忘れ、その人へ急いで駆け寄っていた。
大丈夫?と肩を優しく叩きながら言うと、その人は体を起こしながら私を見上げた。
(きれいな水色…………)
私がその人の目を見てはじめて思ったのはそんなことだった。
透明度の高い水色の瞳は、まるで宝石……いや、目が潤んでいる為かそれ以上に輝いているようにも見える。
私がじっとその人を見つめていると、顔を少し赤く染めて白い袖の先で涙をぬぐった。
そして私に優しく微笑みかけてきた。
「見られてしまいましたか……」
「えっと、……ごめんなさい」
「謝らなくてもいいです。勝手に涙を流したのは、この私なのですから……」
(もしかしてこの人、無理して笑ってる……?だったら、無理して笑わなくてもいいのに)
「……そうですね、少し無理してました。ごめんなさい。
……あなたの名前はなんですか?きちんとお礼を言いたいのです」
そう聞かれた私は、ふと頭を傾げた。
「私は……えっと、だれだっけ?」
(あれ?そこだけぽっかり穴があるような……)
「やはりですか……」
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