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「――だから!なんで俺なんだよ!?」
彰人は叫びながら、角を曲がる。
何処に向かうなんて考えていない。
直進しては曲がりを幾度か繰り返すと、膝下位の高さのハードルの様なものが目に入った。
「おっ!?」
それを咄嗟に、飛び越える。
宙に浮いている僅かの間にソレは『車止め』だということに気が付いた。
足が地面に着き、そのまま地面を蹴り出す。
目で確認する必要はない此処は――公園だった。
特に大きい訳でもなく、シーソーやブランコ、鉄棒、ジャングルジムなどがあり、隅の一角は砂場になっている。
ごく普通の公園だ。
小学生の頃は良く来ていたが、それ以来は殆ど訪れたことは無い。
まさか、こんな形でここに来るなんて思わなかった。
――突然、ガンッ!と大きな音がした。
立ち止まり、振り返ると、男が車止めにぶつかった様だった。
ソイツはつんのめり、顔面から地面に突き刺さる。
体が不自然に反り、そのまま転がった。
「――――」
彰人は動かなくなったソイツをしばらく見ていた。
死んだ。
死んだのか?
近寄って確かめることは流石に不気味でできないが、どうやらこれで、終わったようだった。
「……はぁ」
彰人は力なく、その場に座り込んだ。
自身の限界を出し続けた挙句、緊張の糸が切れたせいか、体に力が入らなくなった。
全身は疲労を通り越して痛みを感じている。肺はまだ貪欲に酸素を欲していた。
――まったく意味が分からない。
あの男はなんだったのか。
取りあえず、警察でも呼ぶべきか?と彰人は携帯をポケットから取り出す。
折り畳み式のそれを開くとデジタル時計は午後7時56分を示していた。
「まだ、8時でもねぇのかよ……」
うんざりした様に、彰人はため息をついた。
個人的には軽く数時間は立っている気がしたのだが、実際の時間の流れはこんなものか。
呼吸と整え、番号を押していく。
後は通話ボタンを押すだけ、というところで、
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