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この日も、列車は街へと向かって走る。 私は賢一兄さんと同じ高校に入学し、半年ばかりが経った頃。 「賢一兄さんは、大学とやらに行くのですか?」 「…………」 賢一兄さんは外の景色を見たままで、私の質問に答えようとしない。 ここ最近、そのようなことが増えていた。 私も外の景色を見る。 山の木々は、色を緑から赤に変えはじめていた。 「もう、冬も近いですね」 「……ああ」 賢一兄さんは呟くように声をもらした。 どことなく、元気がない。
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