In school

8/17
153人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
ロッカーに移動して上履きに履き替えながら言う。 「だってお前いつも持久走負けてたじゃん。それなのに、何で――」 「あーはいはい」 俺はそこまで言った光を止める。 何だか追求してはならないと思ったからだ。 きっとそれを知ってしまったら、俺は俺でいられなくなってしまう。 当然この時の俺はそう思っていた。 「ま、教室いこ。みんなに怒られる」 光のその言葉に俺は応じて、駆け足で階段を上った。 普段普通に使っている階段なのに、この時何故か違和感を感じた。 視界が白黒する。気持ち悪い。 「どうした悠?・・・・・あー」 何かを察したのか、光は低い声で唸る。 「お前その格好、どう説明するよ」 頭上に「?」を浮かべる。 「鈍感乙。今のお前、女じゃん」 「あっ」 そうだ。今は女なんだった。 どうしよう、と目で訴えかける。 あ、そういや―― 「母さんが校長室行けって言ってたな」 どうして忘れていたんだろう。そんな大事なこと。 俺は自分の不甲斐なさに胸を叩いた。 だが、返ってきたのは柔らかい弾力だった。 「そんなことなら、校長室行ってこい。俺はみんなに話すよ」 ありがとう、と手を振って再び駆け足で廊下を走る。 『みぃつけた』 ふと、耳にそんな声が入ってきた。 だが今はそんなことを気にしてる暇はない。 俺は立ち止まることなく校長室に向かった。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!