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「気安く女の子の身体に触るんじゃありません。このクソ虫がっ」
どこかで聞いたことのある台詞を言いながら手をさする母。
ちなみに母さんの名前は美鈴である。
空手地区大会ベスト8位で我が家最強な鬼である。
その反射神経や拳の力は絶妙で、一発入ったら失神である。
よって父さんは失神した。てか、精神弱っ!
「さて、悠は学校に行きなさい。裕子も元気だして。ほら!」
パシンパシンパシンパシン!
母さんの連続ビンタが裕子の頬にヒットする。
「うぅー。ひひゃい・・・」
「早く行きなさい。ほら、悠も支度して」
「あ 、あのー、学校の件は・・・」
「もう連絡済みよ。校長室に来るように、だそうよ」
さすが母である。やることが早い。
行く気はでないが、きっとしょうがないことなのだろう。
重たい足を動かしながら俺は溜息を吐く。
裕子は急ぎでパンを口に放り込み、俺はブレザーを着て玄関に立つ。
「何だか奇妙な光景だなー」
裕子が呟く。
俺は玄関にある鏡でその姿を確認する。
凛々しい女社長みたいだ。自分ということを忘れて惚れてしまう。
あ、胸は意外にデカい。ブラジャーは母から借りた。
「ああーやだやだ。今日から私、兄ちゃんのこと"お姉ちゃん"って呼ばなきゃならないのかー」
「・・・・・出来れば呼んでほしくない・・・・・」
俺は玄関の扉に手を掛けながら裕子に言う。
それじゃあ、新しい1日の始まりとしますか。
「「行ってきまーす!」」
俺は扉を開けた。
うん。今日はやけに太陽が身にしみる。
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