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『――ようこそ』
そのひとは、神秘的な美しさをたたえていた。
一目見ただけで人間ではないとわかった。それは桃色の波打つ髪のせいでもあるし、コスプレみたいな羽衣を身にまとっていたせいでもある。
ただ何より彼女を人ならざるものにさせるのは、そのオーラであろう。
目には見えない神々しさ。
この世のものとは思えない、慈愛に満ちた表情。
……少年はそのすべてに魅せられた。
『私はリスタチア。人は私を神と呼びます』
「か、み」
少年はカミサマを信じてなどいない。紫煙に満ちた醜悪な世界に生きてきた少年には、信仰するものなど何もない。
カミサマなんて、人に祈られるだけ。カミサマは人に何もしてくれない。高みの見物を決め込んだ存在に捧げる祈りなどなかった。
けれど何故だろう。
この神々しさを目の当たりにした途端、そういった荒んだ思いが融けていく。
『あなたが私を信じ、祈ってくれるならば……私はあなたを見守り、力となりましょう』
陳腐な言葉だ。非力な言の葉。
だが少年は、その言葉を鵜呑みにしたい衝動にかられた。
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