~エピローグ~

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死屍累々。 瓦礫の上に重なるようにして倒れこむ幾つもの骸。 血を流れるは、赤の川。 死臭と、鉄のニオイ。 あちらこちらに立ち上る天を焦がす黒炎の柱は、降り出した雨をも飲み込んでいく。 「―――――」 荒れ狂う黒炎の中、灰色の空を見上げる青年がぽつりと呟いた。 炎が発する風をその身に受けながら、誰に向ける訳でもなく。 「―――――」 彼の声は燃え上がる炎の音に飲み込まれ、消えていく。 それでも彼は、言葉を続けていく。 まるで、誰かに語りかけるかのように。 「――――――――」 一筋の滴が、頬を流れ落ちる。 雨とは違う、もっと冷たい粒が。 頬をすべり、落ちたそれは赤の川へと入り混じりすぐに見えなくなる。 それが、彼が失った最後の“モノ”だった。 「―――――――」 慟哭。 音にならない叫びが、彼の喉を突き破り辺りに響く。 ―――例えるなら、怨嗟。 彼の口から毀れるそれは、言葉ではなく怨嗟そのものであった。 理不尽な世界への、そして自分自身への怒りと憎しみ。 体の中で暴れまわるそれらをすべて吐き出すように、彼はただ吠えた。 灰色の空の下。 その喉が擦れて音を失うまで。 虚ろな表情を、狂気の笑みへと変化させながら。 「―――――」 終わりを。 終焉を。 この世界に、復讐を。 彼は決意する。 理不尽な世界を、そして自分自身を。 必ずや、終わらせると。 その日、一人の悪魔が生まれた――――
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