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「……それで土方さんときたら、いつも私を子供扱いするんです。
さっきなんかも、ここに来ようとしただけでやかましく言われて」
「ふふっ。それだけ沖田様の事が心配なのでしょう。
それだけでも、ありがたく思わないといけませんよ」
「ちぇっ。お道さんまで、私を子供扱いですか。
だいたい私ももう、20を越えているんですよ」
「とはいっても、土方様からすれば、まだまだ可愛い弟分…といったところではないのですか?」
「はぁ…弟分といつまでも思われるのも酷ですよ。
まあ、女子であるお道さんには分からないと思いますけど」
「もう。そんなわからず屋の女子に話したのは沖田様ではありませんか。
ねえ、辰三(タツゾウ)兄さん」
お道が声をかけると、奥から辰三が顔をのぞかせた。
「どうしたお道?」
汗とすすだらけの顔をのぞかせた辰三は、不審げな表情でお道を見た。
辰三とお道。
この鍛冶屋『井村屋』を切り盛りする兄妹だ。
しかも、ただの兄妹ではない。
(二人とも、本当に生き写しみたいだな…)
二人に初めて会った時、総司はそう思ったものだ。
辰三とお道は双子の兄妹で、年はどちらも18くらいだと聞いている。
二人とも、丸顔に可愛らしい顔で透けるような白い肌に細い手足をしていて、とても鍛冶屋を営む者とは思えない。
だが、お道はともかくとして、辰三の鍛治職人としての腕前は総司も一目おいている。
(私よりも年下なのに、本当に腕の良い人だからな)
そんな辰三の腕前と、この兄妹の気さくさも総司の好きなところだった。
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