いつもと同じで特別な日

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いつもと同じで特別な日

青い空。 青い海。 カラフルなパラソル。 「律、どっちが早いか競争しないか」 「臨むところだ」 ふっ、と笑って数拍後すごい勢いで泳ぎ出す夜一と律。 「仁戸~ビーチボールしよっ」 「篤斗も靖吉も~」 満面笑顔の双子たちにズルズル引きずられていく仁戸と篤斗、靖吉。 そんな微笑ましい光景を、結菜はパラソルの下で見ていた。 「ふふっ。みんな楽しそう」 久しぶりの海だから それも当然なのだけれど。 「結菜は行かないの?」 コンロを組み立てながら汀卒が訊いてくる。 「私はいい。泳げないし…水着、嫌だから。ビーチボールだって出来ないしね」 小さく肩をすくめて笑う。 こんなのいつものこと。 別に気にしてない。 「そっか」 「汀卒はいいの?」 手際よく肉類を出してきた彼に“手伝う"と言って隣に立つ。 「う~ん。まぁ出来ないことはないんだけどね」 「…?? 遊んできていいよ? 私やってるから」 微笑して首を傾げると、彼は“じゃあ少しだけ"と言って歩きかけたが、ふと立ち止まって此方へ戻ってきた。 「…結菜、一人じゃ暇だし可哀想だよね」 「え? 私は別に――」 “何ともないよ"と言ったが遅かった。 にっこりスマイルを浮かべて彼の紡いだ“縛!"と言う声が私の耳にだけ届いた。 (――遅かった) 彼の家は代々続く陰陽道の家系。 こんなことどうってことないのである。 ちなみに私たちは全員そうなのだけど、一番修業を積んだらしいのは汀卒のようで。 一番頻繁に使うのも彼だったりする。 私に片目をすがめてみせると彼はみんなの中へ歩いていき、程なくして一人の人を引きずって帰ってきた。 「はい。…じゃ、俺少し遊んでくるから」 片手を上げて三度去っていった彼の背を呆然と見送ってから、慌てて我に返って倒れている(術により身動きが取れない)人のそばへ寄る。 「靖吉…!!」 「…っ。はは…捕まった」 「…もう」 苦笑いしている彼に呆れた笑みを浮かべて札を彼の腕に貼り付ける。 途端、すっと靖吉が起き上がった。 「大丈夫?」 「ん~まぁな。…にしても何だっていきなり……」 「…あはは。何かね――」
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