いつもと同じで特別な日

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「…はぁ。…のやろぉ」 呆れ顔で半眼になり汀卒を見ている彼に思わず吹き出す。 「…ん? どした、結菜?」 「…ふ、ふふっ……。ううん…何でもないの。ほんと皆仲良しだなぁ…って思って…ふふっ」 「…そぅかぁ? 少なくとも汀卒は俺たちで楽しんでるだけだぞ」 「そっかな…? でも私は…面白いし楽しいよ? 皆仲良さそうだから」 「…そうかぁ?」 「そうだよ」 「…そっか」 苦笑して喧騒に視線を投じる。 「…楽しそうだな」 「だね」 顔を見合わせ笑い合う。 「ほら律、遅い!!」 「お前が速いんだ、よ…っ!!」 眉を寄せながらも汀卒を泳いで追う律。 「負けたら焼き肉抜きね~」 「はぁ?! んなめちゃくちゃな!!」 「…あ、じゃあ夜の肝試しを結菜と回る奴決めにしようか。篤斗~仁戸~靖吉~夜一~!!」 良いことを思いついたとばかりにニッコリ笑って皆を集める。 「…何だ」 嫌な予感が拭えない一同である。 「うん。夜の肝試しを結菜と回る奴決め競争しない?」 「…まず結菜、回らないって言うと思いますよ」 「同感だ。…というか肝試しやる、って今はじめて聞いたんだが」 「だって俺が今思いついたことだからね?」 「「「「「………………」」」」」 彼の破天荒ぶりを知ってはいるが、最近それが増してきているような気がするのは自分たちの気のせいだろうか。 「…絶対お前に勝てねぇだろ」 唸った靖吉に笑顔で首を傾げる。 「そう? 天地がひっくり返ったらあり得るかもよ?」 「…天地がひっくり返らないと勝てないってことだろ、それ」 律の鋭いツッコミにも微笑を浮かべるだけの汀卒に溜め息をつく。 「しゃ~ねぇ、ダメもとでやるか」 「ですね。…勝算は全然ありませんけど」 よ~い……ドン!! 「皆、お疲れ様……大丈夫…?」 グッタリと砂浜に倒れている皆にタオルと飲み物を渡して回る。 (――今日はまた激しくやってたなぁ…) 何往復も競争しては騒いで……そんなに何を取り合ってたのだろうか? (――お昼ご飯…かなぁ…) それだったらまぁ、お腹も空くし躍起にもなるのかもしれない。 一人涼しい顔で座る汀卒にも渡しに行こうと顔を上げると、ちょいちょいと手招きされて駆け足で寄る。 「お疲れ様。…ねぇ汀卒。何を取り合ってたの? お昼ご飯??」
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