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筋力トレーニングも終わり、
先生の指示があり、
今日の部活が終わった。
まだ辺りは明るかった。
帰り道、特に家に帰ってすることもないので古本屋に立ち寄った。
僕は本がすごく好きなので僕が本に夢中になるのに時間はかからなかった。
物語もクライマックスを迎えたころ、ふいに後ろから声がした。
「谷くん?」自分の名前を呼ばれ、驚きながら後ろに振り向いた僕の前には姫野とその友達が立っていた。
その友達が「誰?」と聞くと姫野は「水泳部の谷くんだよ」と答えた。
くんというのには少しの恥ずかしさと距離の遠さを感じる寂しさがあった。
姫野も本が好きで友達はそれに付き合わされているらしい。
結局その友達は帰り、僕と姫野が並んで本を読む形となった。
隣に憧れの彼女がいる、帰りたい、しかし帰りたくない。
そんな気持ちで本の内容なんて全く入っていなかった。
そんなとき彼女が「本好きなんだ?」と誰へとでもなく言った。
めったに会話しない僕でも憧れの人となれば会話くらい何ともない。
「会話が得意じゃないので本が唯一の楽しみみたいなものなんです」と言った。
本が好きか聞かれたのに自分のことも混ぜてしまった、まるで自分の事を知ってほしいみたいじゃないかと、手遅れの反省をしたが、彼女の反応は予想外のものだった。
「私も最初そうだったんだ」と言った。
意味がわからなかった。
そして彼女は自分がどのような経緯で今の発言に至ったのか、僕に淡々と話した。
彼女は小学生のとき、会話を極力避けて生活していた。
その様子を見て他の生徒から小さないじめをうけていたという、その時彼女に1人の男子が話しかけてきて、暗いままでは人生つまらないし、このままじゃ何も変わらないと悟され、自ら明るい性格になったという。
僕は衝撃とさらなる尊敬に固まってしまった。
彼女は恥ずかしそうに笑うと「いまじゃ思い出したくもないけどね」と言った。
僕は開いていた本に目を落とした。
気付いたら最初のページになっていて、そこにはこう書かれていた。
『物語のはじまり』
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