1.屋上

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 彼はその週の月曜日、掃除当番だった。掃除当番の仕事として、教室の最後の戸締まりというものがある。そして、その戸締まりには、ある付随した仕事があるのだ。それは、教室の鍵を職員室まで持って行かなければいけないというものだ。職員室が近くにあればそれほど苦でもないその役割は、しかし、彼のクラスの多くの生徒にとって忌避されていた。というのも、鍵を持って行く職員室は校舎の五階にあり、彼らの教室は二階にあるからだ。いくらまだ中学生という体力の有り余っている若い身空の彼らでも、誰が好きこのんで階段を三階分も上り下りしたいものだろう。当然、自分から立候補する人間などいない。そうなると、自然、その役割は掃除当番達の中で押し付け合いになり、結局のところ、じゃんけんで決めようということになるのが常だった。そして、一度目のかけ声の後、祐助だけがちょきを出し、残る五人がぐうを出すという奇跡に遭遇し、彼は見事その役割を押しつけられたのだった。
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